ABOUT

1920年代ベルリン。様々な人間のドラマが交差する豪華ホテルの一夜を描いたミュージカル『グランドホテル』。
若く美しく、だが貧しいフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵は、ギャングによる借金の取り立てから逃げている。帝政ロシアで一世を風靡したバレリーナ、グルシンスカヤは座員を養う引退興行のためにベルリンへ。重い病を患う会計士、オットー・クリンゲラインは、これまでの貯金を全て使って、人生の最期の日々を豪華なホテルで過ごそうとしていた。傾きかけた織物工場の娘婿社長プライジングは、会社を立て直す会合のためにホテルへ。ハリウッドでスターになることを夢に見るタイピストのフレムシェンはプライジング社長の私設秘書に誘われる。偶然にもグランドホテルで出会い、それぞれの人生が変わるような一夜を過ごす。
「グランドホテル、ベルリン。いつも変わらない。誰かが来て、誰かが去っていく。ひとつの命が終わり、ひとつの命が生まれる……。ひとつの心が引き裂かれ、ひとつの心が高鳴る……。ひとりの男が牢獄へ行き、ひとりの男がパリへ旅立つ。いつも変わらない。時は過ぎる、淡々と。人生も回り続ける。グルグル、グルグルと……。では、もう一日、いるとしようか。」

人物相関図

ミュージカル「グランドホテル」で繰り広げられる数々のドラマと魅力的な音楽たち

人間ドラマの心の機微を彩るジョージ・フォレスト氏、追加音楽モーリー・イェストン氏が綴る名曲の数々──。開幕前に少しだけご紹介いたしましょう。

The Grand Parade [オッテンシュラッグ] 光枝明彦佐山陽規ほか

物語の舞台は、1920年代の大都市ベルリンの豪華なグランドホテル。それぞれ、何か事情を抱えた人たちが集っている。そんな登場人物たちを、オッテンシュラッグ医師が紹介するナンバーからこのミュージカルは始まる。


Table With a View [オットー・クリンゲライン] 中川晃教成河

オットー・クリンゲラインは、簿記係としてコツコツとお金を貯めてきたが重い病を患い、人生の最終地としてグランドホテルを訪れた。せめて最期の望みとして、「このグランドホテルで最期の日々を過ごしたい」という自身の夢を語る。


At the Grand Hotel [オットー・クリンゲライン] 中川晃教成河
[フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵] 宮原浩暢伊礼彼方

オットーがこの豪華なグランドホテルでの生活を夢見て、ホテルの宿泊客の一員になりたいと願う。やがてフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵の手助けで宿泊出来ることが決まると、大喜びし、この曲を歌い始める。


Maybe My Baby (Loves Me) [フレムシェン] 昆夏美真野恵里菜
[ジミーズ] 味方良介&木内健人

歌とダンスによるパフォーマンスを披露して訪れるお客様を楽しませている、二人組のアメリカ人エンターテイナー・ジミーズが開店準備をしながら、「きっとあの娘は僕のことを愛しているんだと思うよ」と歌う。途中でタイピストのフレムシェンも加わって歌い踊る軽快なナンバー。


Fire & Ice [エリザヴェータ・グルシンスカヤ] 安寿ミラ草刈民代

かつて一世を風靡した引退間近のプリマバレリーナであるエリザヴェータ・グルシンスカヤが、過去の栄光を取り戻したいと思いつつも、年齢を重ねたことによって自分の存在価値を見失い、苦悩する。グルシンスカヤとベルリンの人々のナンバー。


Girl in the Mirror [オットー・クリンゲライン] 中川晃教成河
[フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵] 宮原浩暢伊礼彼方
[フレムシェン] 昆夏美真野恵里菜

ホテルのロビーでフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵とフレムシェンが会話を交わす。「私の夢は映画に出ること、ハリウッドスターになりたいの」と語るフレムシェン。徐々に曲調はアップテンポになり、「現実から逃れて、世の中みんなが憧れる鏡の中にいるような女の子になるわ。行きたい、ハリウッド!」と、ダンスを交えて華やかに歌い踊る。


The Crooked Path [ヘルマン・プライジング] 戸井勝海吉原光夫

ヘルマン・プライジングは繊維工場の娘婿社長として活動し、何かを掴むには歪んだ道を選べという持論を持っている。現在、彼の会社の経営は窮地に追い込まれ、切迫したやり取りが繰り広げられている。全てを手に入れようとする傲慢さの陰には、常に弱さや脆さが見え隠れしている。


Intro - Who Couldn't Dance With You [オットー・クリンゲライン] 中川晃教成河
[フレムシェン] 昆夏美真野恵里菜

待ち合わせの約束をしたフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵とフレムシェンが踊り始めるが、やがてオットーが登場し、オットーとフレムシェンが二人で踊ることになる。憧れのグランドホテルを訪れ、かわいい女の子と一緒に踊るという行為は、オットーにとって最高の時間、至福のひと時なのである。しかしそこには男爵の思惑も見え隠れしている。


Love Can't Happen [エリザヴェータ・グルシンスカヤ] 安寿ミラ草刈民代
[フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵] 宮原浩暢伊礼彼方

実はお金に困り、借金の取り立てから逃げているフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵は、グルシンスカヤの部屋で盗みを働くことを計画する。しかし、部屋で二人は鉢合わせし、男爵はとっさに「あなたのファンです、あなたに憧れていました」と告白。高揚した二人は男女の仲に……。


What You Need (What She Needs) [ラファエラ] 樹里咲穂土居裕子

グルシンスカヤをじっとそばで見守っているのは、親友であり、秘書であり、時にはドレッサーである一人の女性・ラファエラ。「彼女が困った時に助けられるのは私しかいない。あなたを守れる人になるわ」と、ラファエラが自身の想いを歌うしっとりとしたナンバー。


Bonjour Amour [エリザヴェータ・グルシンスカヤ] 安寿ミラ草刈民代

一夜を共にした部屋で、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵は真実の愛に気付き、グルシンスカヤに向かって「本当のことを言うと自分は嘘を付き、あなたの宝石を盗みに来たのだ」と告白する。「そんなことはどうだったいいの。一緒に次の公演地に来て欲しい」とねだるグルシンスカヤ。バレリーナとしての自分の価値を見失っていた彼女が、己を取り戻したかのように、愛の訪れを喜び歌う。


The Grand Charleston
We’ll Take A Glass Together
[オットー・クリンゲライン] 中川晃教成河
[フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵] 宮原浩暢伊礼彼方
[フレムシェン] 昆夏美真野恵里菜
[ジミーズ] 味方良介&木内健人

エンターテイナー・ジミーズとフレムシェンを始め、グランドホテルに集う人々が陽気に、この当時流行りのダンス・チャールストンを踊る。リズムに合わせて、心も身体も軽くなっていくような、耳心地が良い曲調。
男爵の助言で購入した株が大当たりし、オットーと男爵、グランドホテルで出会った二人は友情に乾杯する。


I Waltz Alone [オッテンシュラッグ] 光枝明彦佐山陽規

第一次大戦によって傷ついている陰気な老人医師・オッテンシュラッグは、孤独にグランドホテルでの出来事を見守っている。このナンバーは静かに語り部のように歌われるが、その陰で様々な人間模様が一気に動きを見せ始める……。


Roses at the Station [フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵] 宮原浩暢伊礼彼方

男爵は、愛を表すかのような情熱的な赤い薔薇と共に、グルシンスカヤとの待ち合わせ場所である“駅”を目指す。これは現実なのか、はたまた妄想なのか……。己の境遇とグルシンスカヤへの愛を、万感の思いを込めて歌い上げる。

執筆:住川絵理(ERIZUN)

他にも『ファントム』『タイタニック』『ナイン』など数々のミュージカルメロディメーカーである、モーリー・イェストン氏作曲の珠玉のナンバーをお楽しみに!

※なお、演出上の都合などにより内容は変更する場合もございます。