『グランドホテル』公開稽古レポート

更新日:2016/3/17

皆様ようこそ、グランドホテルへ──。

GREENチーム
REDチーム

『グランドホテル』の公開稽古が、2016/3/8(火)に都内で行われました。
まずは演出のトム・サザーランドが、冒頭の言葉で口火を切ります。
過去に、小説・映画・ブロードウェイでお客様がご覧になった『グランドホテル』とは全く違う、新たなミュージカル『グランドホテル』をお見せしたい、と熱く語るトム。

トムの語るミュージカル『グランドホテル』

グランドホテル公開稽古風景

ドイツ人作家のヴィッキイ・バウムによる『Menschen im Hotel』が『グランドホテル』の原作です。
<主人公>に焦点を当てて書かれていたそれまでの小説技法から抜け出し、とても多くの登場人物が、皆主人公とでも呼べるように描き出されたこの小説で、彼女は小説界に革新をもたらしました。
中には出会うことすらない登場人物たちの、ただひとつの共通点。
それは、<グランドホテルにいる>ということ。

グランドホテル公開稽古風景

『グランドホテル』は、戦争の影が見え隠れしている1929年のドイツが舞台です。
ユダヤ系の女性であったヴィッキイ・バウム自身も、この年、ベルリンを離れアメリカに渡りました。
この頃のベルリンの<持てる者>と<持たざる者>──。
今回のミュージカル『グランドホテル』は、この言葉がキーとなります。

グランドホテル公開稽古風景

同じ音楽、同じ脚本でありながら、キャストの力によって、印象を変える『グランドホテル』。

一つは、楽観主義的に捉えます。
それぞれのキャラクターが目指しているものがあり、前向きで、それを達成し、物事がうまく収まる。
何かを成し遂げようと思って、それが成し遂げられた人々です。

もう一つは、歴史が物語っているベルリンの1920年代終盤から30年代にかけて起こることを示唆するものです。
嫉妬や嫌悪の感情が台頭する時代、人々の中にある夢や希望が剥奪される時代、力づくてものが進んでいく時代。
そんな時代に、何かを成し遂げようとしたが手が届かなかった、あるいは届いた瞬間に奪われてしまった人々です。

GREENとRED、はじまりの交差点

グランドホテル公開稽古風景

便宜的に「楽観的」「悲観的」とは言いますが、そう簡単に語れない人間模様を描きたい、誰も観たことがない『グランドホテル』にしたい、と語るトムに、いよいよ公開稽古への期待が高まります。

今回披露されたのは、冒頭のシーン約20分。
トム曰く、「交差点の中心で、片方のチームが右へ、片方のチームは左へと移動する、まさにスタート地点」。
つまり、冒頭の時点では、ほとんどGREENとREDで違いはない、とのこと。

グランドホテル公開稽古風景

RED、そしてGREENの順で行われた公開稽古。
印象的に登場するスペシャルダンサーの湖月わたるを皮切りにキャスト全員が舞台上に登場し、ミュージカル『グランドホテル』が始まります。
オッテンシュラッグ医師役の光枝明彦[GREEN]と佐山陽規[RED]により交錯する人々が紹介され、舞台上のどこを見てよいか分からないほど、あちらこちらでそれぞれの人物が描かれていきます。
貯金をはたいて憧れの豪華ホテルで人生最後の時を過ごすべく訪れたオットー・クリンゲライン(中川晃教[GREEN]/成河[RED])、最初から何やらよろしくない雰囲気漂うフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(宮原浩暢[GREEN]/伊礼彼方[RED])、当然のように受け取る花束の裏で何を考えているのか…バレリーナ グルシンスカヤ(安寿ミラ[GREEN]・草刈民代[RED])をはじめ、まさに全員が主役。
ミュージカル『タイタニック』でも披露されたトム・サザーランドの演出手法、本領発揮です。

また、今回はリー・プラウドによる振付も目玉のひとつ。
シュッとした立ち居振る舞い、キレの良さはリーならでは。
チャールストンの場面など、リーによる振付のダンスも大いに期待できそうです。

※REDチームの男爵役 伊礼彼方は当日不在のため、同役をGREENチームの宮原浩暢が務めました。

両チームに最大限のドラマ性を

トム・サザーランド、中川晃教、成河

稽古後の囲み取材では、どちらのチームがよりドラマチック、ということではなく、「両チームに合わせて、最大限のドラマ性を作りたい」と語るトム。
この日の稽古箇所は両チームの違いが一番無い箇所だ、と言いつつも、すでにそれぞれのチーム個性が出て来始めている様子。

これからグランドホテルで何がおこるのか、それを示唆するものとなるオープニングを披露した公開稽古。
この先、分かれていくGREENとREDの結末が非常に楽しみとなるものでした。

東京公演:2016/4/9(土)〜4/24(日) 赤坂ACTシアター
名古屋公演:2016/4/27(水)、4/28(木) 愛知県芸術劇場大ホール
大阪公演:2016/5/5(木・祝)〜5/8(日)梅田芸術劇場メインホール
にて上演。

皆様のご来場をお待ちしております。

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